大人になって知り合う人たち。
子どもの学校、習い事、職場…環境が変わればだんだんと疎遠になっていく。
本当に気を許せる友達となるとその数は少ない。
彼女はその中の一人。
飲みに行けばあっという間に時間が経っていて気づけば日付が変わっている。それが毎度のことだった。
いつも人を気遣い、元気づけてくれる人。
彼女がいたから頑張れたことがたくさんあったな。
コロナ禍となり、会うこと自体が憚られた。
自分が感染したことで、家族や職場に迷惑がかかったら申し訳ない…そんな気持ちが会うことを阻む。お互い同じ気持ちだった。
安心して会える日が早く来るといいね
安心して会いたいね
元気?
体に気をつけてね
コロナワクチン打ったよ
コロナはいつ落ち着くの?
誕生日おめでとう
会えるのを楽しみにしてるよ
娘が入籍したよ
息子がこの秋、式を挙げるよ
そろそろ会えるかな
会えるまで頑張るよ
私のこと忘れないで!
話も積もりすぎた
夜通し飲んでも足りないね
コロナ落ち着いてきたね
ランチでもできるかな
そろそろ会えそうだね
他愛もないやりとりが続いた。
私が入院した日は彼女の誕生日。
いつものようにハッピーバースデイのメッセージを送る。自分の病気のことには触れていない…心配かけたくなかったから。
いつものように返信があった。
毎日暑いね、会えそうだったら会いたいな。
暑いから体に気をつけてね。
これが最期のメッセージになるなんて。
その日からひと月半に渡る入院生活。
退院してからも体調優先。
会えたら会いたいと言っていた…
なぜ会わなかったのだろうと悔やまれる。
彼女が病と闘っていたというのに何も知らなかった。元気でいるものと思っていた。辛かったね、不安だったよね…心配かけたくなかったの?
思えばこのところ、ふとしたときに彼女を思い出すことが度々あった。元気にしてるかな…それでとどまってしまったけれど、「会いに来て」というメッセージだったのだろうか。
いつでも会えると思っていたとしたら、それは大間違いなのかもしれない。
本当であって欲しくない。
まだ受け止めきれない自分がいる。
ちゃんと伝えなきゃ。
会いに行けなくてごめんね。
悔しかったね、怖かったね。
それでも頑張っていたんだね。
あなたとの時間はいつも笑顔で溢れていたね。楽しい時間をいつもありがとね。
忘れないよ、忘れるわけがないよ。
たくさんたくさん…ありがとね。
心得:其の二七
ただただ悲しいときは無理に笑ったりしなくていいんだよの巻